今週の動きはいずれも、同じ問題を浮き彫りにした。外部決済やウェブ決済を利用できる法的環境が整いつつある一方、これらの決済に対してプラットフォームが課す手数料は、米国と欧州の双方で確定していない。

米国では外部リンクを認める差し止め命令が既に効力を持つものの、手数料率は未決定となる。EUでは18の開発者団体がアップルの改定条件に異議を唱えている。米連邦最高裁判所はアップルの上訴を受理したが、審理対象は限定的な手続き上の論点にとどまる。それぞれの現状を整理する。

米国で外部決済リンクが利用可能に 手数料率は未決定

米連邦最高裁判所が2026年8月、手続きの停止を求めるアップルの申し立てを退けたことを受け、米国のApp Storeでは、開発会社が利用者をウェブ上の決済ページへ誘導できる状態が続いている。アップルによる別の上訴が進む間も、差し止め命令は効力を維持する。

この命令は、Epic Gamesとアップルの訴訟における第9巡回区控訴裁判所の判断に基づく。同裁判所は、アプリ外で購入できることを利用者に知らせる案内画面と、外部決済ページへ移動する動的リンクを認めた。

一方、外部購入に対してアップルが手数料を徴収できるか、徴収できる場合に何%とするかについては結論を示していない。アップルが公開した資料や、確認可能な裁判記録にも確定した料率は記載されておらず、差し戻し審で地方裁判所が決める予定となる。

The Mac Observerは、2026年8月13日付の提出書面で、通常15%、一部のアップル向けプログラムには10%以下を適用する段階的な手数料案が示されたと報じた。ただし、同媒体は元の裁判記録を開いて文言を確認できなかったとしている。

注目点

米国では、外部決済へのリンクを現在利用できる一方、その採算性を左右する手数料率は確定していない。

裁判所が15%前後の手数料を認めた場合、外部購入にもアップルへの支払いが発生する。パブリッシャーが実際に得られる効果は、アプリ内課金手数料との差額から、ウェブ決済、税務、返金などの運用費用を差し引いて判断する必要がある。

手数料率は開発会社ごとの交渉ではなく、裁判所の判断によって決まる見通しとなる。パブリッシャーには、料率の確定を待つのではなく、外部決済への導線を構築し、想定される複数の手数料率を基に採算性を検証する姿勢が求められる。

出典

欧州の18団体、アップルの改定条件はDMA違反と主張

アプリ公正化連合(Coalition for App Fairness)や欧州ゲーム開発者連盟(European Games Developer Federation)など、計18団体は公開書簡を発表した。アップルが8月18日に公表し、適用を予定するEU向けApp Storeの新条件について、デジタル市場法(DMA)への違反が続いていると主張する。

最大の争点は、利用者をApp Store外の決済手段へ誘導した場合にアップルが課す15%の手数料となる。

署名団体は、DMA第5条4項が外部決済への誘導を無料で認めるよう求めていると指摘した。欧州委員会は同じ論点を巡り、2025年4月にアップルへ5億ユーロ(5億7000万ドル)の制裁金を科している。

各団体は、App Store以外で配信されたアプリ内の取引に対してアップルが新たに課す5%のコア技術手数料にも反対した。WindowsとLinuxでは、自社配信に相当する手数料が発生しないと説明している。

アプリ公正化連合には、Epic Games、Match Group、Spotifyなどが加盟する。同連合によると、欧州委員会はアップルの新条件を非公式に受け入れる姿勢を示しているという。書簡は欧州委員会に対し、見解を明確にし、理由を示した正式な結論を公表するよう求めた。

欧州ゲーム開発者連盟は、27の国別業界団体と欧州の開発会社2500社を代表している。

注目点

EUのパブリッシャーにとっては、法令対応と事業条件の双方に関わる問題となる。外部決済への誘導に課す15%の手数料と、App Store外の流通に課す5%のコア技術手数料は、アップルへの支払い後も外部チャネルがアプリ内課金より有利になるかを左右する。

DMAの下で外部誘導に手数料を課せるかについては、正式な結論が出ていない。当面は15%と5%を事業計画上の費用として織り込みつつ、欧州委員会の正式見解によって料率が引き下げられるか、撤廃される可能性を注視する必要がある。

出典

まとめ

米国とEUでは、外部決済とウェブ決済を利用できる方向へ進んでいる。一方、外部チャネルにもプラットフォーム手数料が課される可能性があり、パブリッシャーは法令対応、税務、不正対策などの運用負担もどこかで担う必要がある。

米国の手数料率は地方裁判所の判断を待つ段階にあり、EUでもDMAに関する欧州委員会の正式見解が示されていない。訴訟の決着を待つよりも、複数の手数料率を想定してDTCチャネルを構築し、各シナリオの採算性を検証することが現実的となる。

国ごとに異なる税務、返金、不正取引などの運用を担う領域では、tokenzのような販売事業者(マーチャント・オブ・レコード、MoR)が役割を果たす。パブリッシャーはMoRを活用することで、手数料率が確定するまで事業を停止することなく、条件の変化に合わせて外部販売戦略を調整できる。