今週、外部決済を巡る動きは、政策論から測定可能な収益への影響へと進んだ。日本では、業界団体がスマートフォン競争促進法の実効的な運用を規制当局に要請した。米国ではApp Storeの消費支出が、調査開始以来10年で初めて前年同期を下回り、外部決済への移行がプラットフォームの収益に影響し始めた可能性が示された。一方、Androidでは開発者確認の厳格化により、9月からGoogle Play以外でのアプリ配信条件が変わる。アプリ外収益化の機会が具体化する一方、規則変更に継続して対応できる運用体制の重要性も高まっている。
国内アプリ業界団体、スマホ競争促進法の実効的な運用を要請
日本では、第三者のアプリストアと外部決済を認めるスマートフォンソフトウェア競争促進法が2025年12月に全面施行された。
国内アプリ業界の8団体で構成する連合体は2026年8月26日、アプリ事業者を対象とした調査結果と改善提案を公表した。同法が目指す競争環境は、まだ十分に実現していないと指摘した。
調査には30社から34件の回答が寄せられた。代替アプリストアの利用率は5.9%、アプリ内での外部決済の利用率は8.8%にとどまった。利用者の少なさ、手数料面での利点の乏しさ、プラットフォーム事業者から不利な扱いを受けることへの懸念などが理由として挙がった。
アプリ事業者が公式サイトへのリンクについて掲載拒否の通知を受けた後、アップル関連の事例では90%、グーグル関連では全ての事例でリンクを削除したという。
連合体は、iOSにおける代替アプリストアのインストール手順が直感的ではないことも問題視した。外部決済などに必要となる権限の要件が、事前の通知なく変更されたとも指摘した。
日本はEUや米国に比べて「3年遅れている」とし、公正取引委員会に対して、アップルとグーグルの条件が法律に適合しているかを明確にしたうえで、実効的な法運用に移るよう求めた。Epic Gamesなどが加盟する国際的なアプリ公正化団体も、公取委に申し立てを行っている。
注目点
日本では代替アプリストアと外部決済が法的に認められたものの、利用率はそれぞれ5.9%と8.8%にとどまっている。今回の業界団体による調査と提案は、アプリ事業者が直面する具体的な障壁を可視化し、規制当局へ実態を伝える動きとなる。公取委の今後の対応を注視するとともに、条件変更にも柔軟に対応できる決済・コンプライアンス基盤を整えておくことが、日本でDTCを持続的に展開するうえで重要となる。
出典:ケータイ Watch 2026年8月26日、日本経済新聞 2026年8月26日、読売新聞 2026年8月26日
米App Store消費支出、10年で初の前年割れ
Sensor Towerの推計によると、2026年4~6月期の米App Storeにおける消費支出は前年同期比6%減少した。同社が調査を始めてから10年で初めて前年同期を下回った。前年同期は9%増えていた。英Financial Times(FT)の報道をMobilegamer.bizが伝えた。
Sensor Towerは、減少の主因としてアップルとEpic Gamesの訴訟を挙げた。訴訟の結果、アップルは開発会社が利用者を外部決済リンクへ誘導することを認めざるを得なくなり、通常の30%の手数料を徴収できなくなった。同社は、これによってApp Storeが「大きな影響を受けた」と分析した。
FTはAppfiguresの推計も紹介した。アップルが米国で得る手数料収入は2026年に18%減少したという。ブラジルと日本でも、アプリストアの開放を求められた後、アップルの手数料収入が減っているとした。Epicのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)も、これらの数字をXで取り上げた。
注目点
外部リンクや外部決済によって、プラットフォーム事業者の収益が実際に減少していることを示す、これまでで最も明確な公表データとなる。制度上の変更にとどまらず、取引がプラットフォーム外へ移り始めたことが数字に表れた。
パブリッシャーにとっては、外部決済が認められた市場で、自社ウェブサイトやDTCを通じた販売が売上高の拡大につながる可能性を示す。市場開放が先行する米国、ブラジル、日本では、外部販売への投資を比較的早く回収できる可能性がある。
Android、9月からアプリ開発者の本人確認を厳格化
Androidで長年認められてきたアプリのサイドローディングが、大きな転換期を迎える。
2026年8月27日に公開された開発者向け解説記事は、グーグルが強化する開発者確認の要件と、9月から適用する新たなサイドローディング規制を説明した。個人開発者と法人では影響や必要な手続きが異なる。Google Play以外でアプリ配信を続けるために、開発者が取るべき具体的な手順も示している。
これまでの報道によると、新たなサイドローディング規制は2026年9月30日に始まる予定となる。
注目点
AndroidアプリをGoogle Play以外で配信するパブリッシャーにとって、開発者確認は任意の手続きから、配信を継続するための必須要件へ変わる。対象には、APKファイルの直接配布、第三者アプリストア、アプリ外のインストーラーなどが含まれる。
既存のサイドローディングや代替ストア経由の配信が停止しないよう、9月の適用開始前に開発者確認を完了する必要がある。個人向けと法人向けのどちらの手続きが適用されるかについても、事前の確認が欠かせない。
まとめ
今週の動きから、外部決済が実際の購入行動とプラットフォーム収益に影響し始めたことが見えてきた。米国ではApp Storeの消費支出が10年で初めて前年同期を下回る一方、日本では制度と運用の隔たりが表面化し、Androidではアプリ外配信に必要な開発者確認が厳格化される。
アプリ外収益化の機会が広がるほど、プラットフォームの条件変更、税務、精算、返金、不正対策、法令順守への対応が重要になる。MoRを活用してこうした運用負担を一括管理することが、パブリッシャーがDTCの収益機会を持続的な成長につなげる鍵となる。
