今週の焦点は、米国における外部決済の採算性を左右する可能性のある手数料率に集まった。米連邦最高裁判所が下級審の手続き停止を認めなかったことを受け、アップルはアプリ外購入に最大15%の手数料を課す案を提示した。一方、グーグルの新たなストアアクセス制度を通じてAptoideが米国のGoogle Playに復帰し、代替アプリ流通が実際に開かれ始めていることも示された。
アップル、米国の外部購入に最大15%の手数料を提案 Epicとの和解協議も要請
米連邦最高裁判所が下級審の手続き停止を認めなかったことを受け、アップルはカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事に、裁判所の命令に基づく手数料案を提出した。
提案した手数料率は、通常のアプリが15%、動画・ニュース・ミニアプリの各パートナープログラムとサブスクリプション更新が10%、年間売上高が約100万ドル以下のSmall Business Program参加アプリが5%となる。
アップルは、この手数料率であれば多数の米国の開発会社が外部決済へのリンクを採算性のある形で提供できると主張した。同時に、同社の知的財産、開発ツール、サービスへの対価も確保できると説明した。比較対象として、Epic Gamesが合意したGoogle Playの外部決済手数料率である20%、15%、10%を挙げた。
米連邦最高裁は8月12日、約24時間の一時停止を認めたものの、翌13日にはアップルによる手続き停止の申し立てを退けた。最高裁は10月に始まる開廷期にアップルの上訴を審理する予定で、同社の準備書面の提出期限は9月14日となる。
争いの発端は2021年の差し止め命令にさかのぼる。その後、アップルが外部決済へのリンクを経由する購入に12~27%の手数料を設定したため、ロジャース判事は2025年4月、同社が命令に違反したとして法廷侮辱を認定した。
第9巡回区控訴裁判所はこの判断を支持する一方、アップルには一定の対価を受け取る権利があると指摘した。そのうえで、手数料率を決めるために案件を地裁へ差し戻した。
Epicは、アップルの提案が第9巡回区控訴裁判所の指針から大きく外れていると反論した。アップルが「必要経費」のみを手数料の根拠とする考え方に従えば、実質的に手数料率が0%になることを認めたとも指摘した。
アップルは別途、両社をジョセフ・C・スペロ治安判事による和解協議に付すよう求める申し立てを提出した。Epicは同意しておらず、申し立てにも具体的な和解条件は記載されていない。
注目点
裁判所が最終的に決める手数料率は、米国のiOS市場における外部決済の事業性を明確にする重要な基準となる。パブリッシャーにとっては、DTCや販売事業者(マーチャント・オブ・レコード、MoR)を活用した収益モデルを、より具体的に設計できる環境が整うことになる。
通常アプリに15%の手数料が適用された場合でも、30%のアプリ内課金手数料と比べれば一定のコスト削減余地が残る。小規模事業者向けには5%が提案され、Epicは必要経費を基準とすれば0%になると主張していることから、より低い水準に落ち着く可能性も残されている。
パブリッシャーは複数の手数料水準を想定しながら、米国でのDTC事業を柔軟に設計できる。MoRを活用して決済、税務、不正対策、返金、法令順守を一括管理すれば、手数料削減に加えて顧客との直接的な関係や決済データを確保し、外部販売を持続的な成長チャネルへ発展させる機会が広がる。
出典:TechCrunch、9to5Mac(手数料案)、MacRumors、9to5Mac(和解協議)
Aptoide、グーグルの新制度を通じて米Google Playに復帰
独立系アプリストア「Aptoide Games」が、10年以上ぶりに米国のGoogle Playへ復帰した。グーグルの新制度「Play Catalogue Access」の承認を受けたもので、米国のAndroid利用者はGoogle PlayからAptoideを見つけ、直接インストールできるようになった。
同制度では、一定の条件を満たした第三者のアプリストアが、独立したマーケットプレイスとしての運営を維持しながら、Google Playの基盤と連携できる。
Aptoideは2009年に設立された。月間利用者数は約2500万人で、40万本を超えるAndroidアプリを扱うとしている。米国は同社にとって最大の市場となる。
Aptoideは、競合ストアの掲載を禁じるGoogle Playの規則に基づき、以前は同ストアから排除されていた。同社は今回の復帰について、Androidのアプリストア間競争を長年妨げてきた障壁を引き下げるものと位置づけた。
最高経営責任者(CEO)兼共同創業者のパウロ・トレゼントス氏は、規制当局による監視の強化や、Epic Gamesとグーグルの訴訟が今回の動きにつながったとの見方を示した。
注目点
代替アプリストアは、アプリ外で利用者に商品やサービスを提供するための重要な流通経路となる。競合ストアをGoogle Playから直接見つけてインストールできるようになれば、パブリッシャーが標準のアプリストアやそのアプリ内課金に依存せずに利用者へ到達する際の負担が軽減される。
今回の復帰は、Epic Gamesとグーグルの訴訟を受けた是正措置が、Androidにおける具体的な代替流通機会につながり始めたことを示す初期事例となる。
まとめ
今週も、裁判所や規制当局がアプリ外チャネルの開放を促す一方、プラットフォーム事業者が新たな手数料体系を構築しようとする動きが続いた。
アップルが提案した最大15%の外部決済手数料は確定していない。最終的な水準はアップル案からEpicが主張する0%まで幅広い可能性が残る。このため、米国で外部決済への導線を構築するパブリッシャーは、特定の手数料率ではなく、複数のシナリオに基づいて収益性を試算する必要がある。Androidでは、代替アプリストアを通じた流通が現実的な選択肢になり始めた点にも注目が集まる。
tokenzがMoRプロバイダーとして重視するアプリ外収益化の持続的な利点は、手数料差だけではない。顧客との関係、決済、継続利用を自社で管理できる点にある。最終的な手数料率にかかわらず、こうした顧客接点を活用できる事業基盤を構築することが重要となる。
