今週は、アプリの流通と決済を巡る市場開放が、事業者の具体的な選択肢として広がり始めた。米国では競合アプリストアのAptoideがGoogle Playで配信を開始し、韓国では大手ゲーム会社が自社ランチャーやウェブショップへの決済移行を続けている。一方、アップルの調査では、アプリ事業者やApp Storeの手数料と特に関係の深いデジタル商品・サービス分野の取引額が3兆7000億ウォンに達したことが示された。
競合アプリストア、米Google Playで10年以上ぶりに配信
Aptoideは8月10日、同社のゲームストアを米国のGoogle Playから直接インストールできるようにした。競合するアプリストアがGoogle Playで配信されるのは10年以上ぶりとなる。
Aptoideによると、月間利用者数は約2500万人で、4万本を超えるAndroidアプリを扱う。米国は同社にとって最大の市場となる。従来はGoogle Playを介さず、利用者が端末に直接インストールする必要があった。
今回の市場開放は、Epic Gamesとグーグルの訴訟におけるジェームズ・ドナート判事の差し止め命令を受けた動きとなる。2023年の陪審評決と、2025年7月のグーグルによる控訴の棄却を経て、同社には競合ストアの配信を認めることが求められた。
Aptoideは、グーグルが2026年6月22日に始めた「Play Catalog Access Program」を通じて提供される。グーグルは同年初め、Google Playの手数料率を20%に引き下げることにも合意した。
注目点
市場開放が決済手段だけでなく、利用者がアプリを見つける流通経路にも広がったことを示す。競合ストアは、Google Play内での掲載に依存しない新たな接点を利用者に提供できるようになる。
もっとも、現時点ではインストールにGoogle Playの基盤を使用する。このため、当面の効果は収益構造の大幅な変化よりも、競合ストアの利用者への到達範囲を広げる点に表れそうだ。
韓国大手ゲーム会社、自社ランチャーとウェブショップへの決済移行を継続
韓国のDigitalTodayが8月4日に公表した調査によると、Krafton、NCSoft、Netmarble、Nexon、Smilegateの各社は、アプリストアではなく、パソコン向けランチャーや自社ウェブショップを通じて処理する決済を増やしている。
背景には手数料の差がある。アプリストアの手数料率が最大30%に達する一方、韓国国内の決済処理手数料は約3~5%にとどまる。
Netmarbleでは、売上高に占める決済関連手数料の比率が2020年の41.3%から30.8%に低下した。2026年1~3月期のプラットフォーム手数料は前年同期比8.3%減の2099億ウォンとなった。
各社は利用者を自社チャネルに誘導するため、独自のポイントや特典制度を運営している。記事に登場するアナリストは、競争の焦点がコスト削減から、利用者データと決済接点の確保へ移ったと指摘する。
注目点
一連の動きは試験導入ではなく、数年にわたって進む損益構造の変化を示す。大手ゲーム会社で手数料率が10ポイント改善すれば、多くのゲーム内施策を上回る業績効果を生む可能性がある。
一方、必要なシステムの整備が進んだ現在、最大の課題は利用者に購入場所を変えてもらうことに移っている。自社チャネルへの移行を促すには、価格差だけでなく、特典や利便性を含めた明確な価値を提示する必要がある。
アップル、韓国の関連取引額は38兆1000億ウォンとする調査を公表
アップルは8月6日、韓国のApp Storeに関連する2025年の取引額を38兆1000億ウォンと推計する委託調査を公表した。2020年の18兆4000億ウォンから2倍以上に拡大した。
調査はソウル大学経営大学の教授と、コンサルティング会社Analysis Groupのエコノミストが実施した。
内訳は、物品・サービスが32兆3000億ウォン、デジタル商品・サービスが3兆7000億ウォン、アプリ内広告が2兆1000億ウォン。アップルによると、取引総額の90%以上には同社の手数料が発生していない。
韓国当局は現在、アップルとグーグルが特定の決済方法を不当に義務付け、外部決済の利用を制限した可能性について調べている。今回の調査は、こうした動きが続くなかで公表された。
注目点
アップルが示した「取引総額の90%以上が手数料の対象外」との数字には、App Storeの手数料が原則として発生しない物品・サービス取引が多く含まれている。
プラットフォーム側が公表する取引総額や手数料に関する数字を評価する際には、全体の数値だけでなく、取引の内訳と自社の商品が手数料の対象になるかを確認することが重要となる。韓国当局が特定の決済方法の義務付けや外部決済の制限について調べていることから、アプリ事業者は今後の動向を注視する必要がある。
出典:ETNews 2026年8月6日、ITDaily 2026年8月6日
まとめ
アプリストア手数料を巡る議論は、決済・流通基盤をどう構築するかという段階へ移りつつある。韓国のパブリッシャーは、単にストア手数料を回避するだけでなく、国内の決済手段を組み合わせ、削減したコストを原資に特典を提供し、利用者との決済接点を自ら確保している。一方、プラットフォーム事業者は法的圧力を受けて流通経路を開放しながら、関連する取引の大半はもともと手数料の対象ではないと主張する。
なお、運用面には課題が残る。複数の市場でこうした決済基盤を安定して運営するには、各市場の税務、返金、チャージバック、法令順守に対応しなければならない。次に手数料が話題になるのを待つのではなく、今から設計しておくべき領域となる。
