今週は、Androidを巡るアプリ配信と手数料の環境が大きく動いた。Googleは、Google Play上で第三者アプリストアをより直接的に配信できる道を開き、日本における手数料引き下げも前倒しする方針を示した。

一方、iOSでは外部決済への誘導を巡る採算性がなお不透明なままとなっている。Epic Gamesは、Appleによる審理停止の申し立てに反対し、米国での外部リンク手数料を巡る判断は先送りされる可能性が残る。欧州では、Google Playの外部誘導制限を巡り、EUがデジタル市場法(DMA)に基づく新たな大型制裁に近づいている。

Google Play、第三者アプリストアのネイティブ配信へ

GoogleとEpic Gamesは、Androidのアプリストア運営に関する従来の和解申し立てを共同で取り下げることで合意した。これにより、Google Play上で第三者アプリストアをネイティブに配信する道が開かれる。

この動きは、Epic Games StoreのGoogle Play上での展開を早めるものとなる。SamsungのGalaxy Storeに加え、AltStoreやSkichのような独立系ストア、さらにはXboxのアプリストアが加わる可能性もある。

2024年の米国判決に基づき、Googleが以前受け入れていた「登録アプリストア」制度は、事実上見直される見通しとなった。これにより、第三者事業者がGoogle Play経由でストアを展開するハードルは大きく下がる。

Googleの広報担当者は、エコシステムに不確実性をもたらす手続きを長引かせるのではなく、申し立てを取り下げる判断をしたと説明している。同社は引き続き、米国の差し止め命令を遵守する姿勢を示した。

TechRepublicは、提供開始日を7月22日と報じている。Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOはこの機会を捉え、Appleに対しても競争の妨害や課税をやめ、市場を開放するよう改めて求めた。

注目点

今回の変更は、Androidにおける代替配信の基盤を大きく変えるものとなる。パブリッシャーは、Google Playのインストール導線の中で、自社または提携先のストアフロントをより低い摩擦で提供できるようになる。

これは、Googleの自社決済網の外側で、アプリ外チャージや代替決済を展開する余地を直接的に広げる動きとなる。

出典: Mobilegamer.bizThe Verge

Google Play手数料改革が加速、日本では9月30日に前倒し

Googleは、サービス手数料と決済手数料を切り離し、料率を引き下げる方針を進めている。

Google Playゲーム部門ゼネラルマネージャーのAurash Mahbod氏によると、新規インストールから発生する一回限りの購入について、標準サービス手数料は30%から20%へ自動的に引き下げられる。開発者側で追加対応は不要とされる。

さらに、新たな「Games Level Up」プログラムを通じて、追加の割引も用意される。ただし、同プログラムにはコンプライアンスや技術面での要件が伴う。これらの変更は、米国、EU、英国では6月30日に適用が始まった。

Mobilegamerによると、米国、英国、EUでGoogleのネイティブ決済を利用する場合は、5%の決済手数料が引き続き発生する。このため、既存プレイヤーによるGoogle決済経由のアプリ内課金は、実質的に従来の30%に近い水準にとどまる。利益率の改善は主に、新規インストールからの取引や、代替決済事業者を活用する場合に現れる。

日本については、GameBusiness.jpがTechnoEdge経由で報じたところによると、Googleは7月14日、2026年の年末に予定していた手数料引き下げの適用時期を2026年9月30日に前倒しすると明らかにした。公正取引委員会との協議や、国内開発者からの要望を踏まえた対応となる。

日本における具体的な決済手数料率は、現時点では未発表となっている。また、日本での登録アプリストア制度は、引き続き12月31日の開始が予定されている。

注目点

サービス手数料と決済手数料の分離により、Google決済ではなく外部決済や代替決済へ誘導した場合、どの程度の利益率改善が見込めるのかを市場ごとに把握しやすくなる。

日本での適用が9月30日に前倒しされたことで、国内パブリッシャーがDTCや外部決済の準備を進める時間軸は一段と短くなった。未発表の日本向け決済手数料率は、今後注視すべき重要な数値となる。

出典: GameBusiness.jp / TechnoEdgeMobilegamer.biz

Epic、Appleによる外部購入手数料審理の停止に反対

米連邦最高裁は6月30日、Appleが民事上の法廷侮辱に適切に問われたかという限定的な論点について審理することを決めた。これを受けてAppleは、外部リンク経由の購入にどの程度の手数料を課せるのかを判断する下級審の差し戻し手続きを停止するよう求めた。

Epic Gamesは7月13日、この申し立てに反対する意見書を提出した。同社は、Appleの申し立てを「避けられない結論を遅らせるための3度目の試み」と位置づけている。最高裁の判断にかかわらず、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事は適切な手数料水準を決める必要があるため、いま手続きを始めることが最も効率的との主張を展開した。

Epicは、審理停止が認められれば、判断が2027年6月ごろまでずれ込む可能性があるとも警告している。Appleは同日、反論書を提出した。さらに7月17日には、ノエル・ワイズ判事が審理停止を認めたCoral Springsの証券詐欺訴訟を引用し、自社の主張を補強した。

背景には、2021年の差し止め命令がある。同命令は、開発者がApp Store外の決済手段へ利用者を誘導できるようAppleに求めたものとなる。Appleは外部購入リンクを認めた一方、当該取引に27%の手数料を課した。その後、法廷侮辱の認定を受け、米国の外部リンク決済についてはこの手数料を撤回している。

注目点

この訴訟は、外部決済への誘導に実際いくらのコストがかかるのかを決める案件となる。AppleがApp Store外で完了した購入にどの程度の手数料を課せるのかは、米国におけるiOS向けDTCや外部チェックアウト戦略の投資対効果を左右する最大の変数となっている。

審理が遅れれば、不確実性は残る。一方、手数料水準が明確になれば、パブリッシャーはアプリ外決済の経済性をより確度高く試算できるようになる。

出典: 9to5Mac(7月13日)9to5Mac(7月17日)

EU、Google Playの外部誘導制限を巡り大型制裁へ

欧州委員会は、DMAに基づく二つの論点でGoogleへの制裁を準備していると報じられている。一つはGoogle検索における自社優遇、もう一つはGoogle Play Storeにおける外部誘導制限となる。後者は、開発者がより安価な購入手段へ利用者を案内することを制限している点が問題視されている。

報道によれば、制裁額は二つの案件を合わせて数億ユーロ規模に達する可能性がある。この規模となれば、2025年4月にAppleへ科された5億ユーロのDMA制裁を上回り、過去最大規模となる可能性がある。Appleへの制裁も、App Storeにおける同様の外部誘導制限を対象としていた。

Financial Timesは7月15日、制裁は「早ければ翌週」にも発表される可能性があると報じた。60日間の是正期間が設けられ、違反が続く場合は日次制裁金が科される可能性もある。ただし、欧州委員会はこの時点で最終決定を公表しておらず、金額や正確な発表日は未確定となっている。

この期間中、欧州委員会は7月16日、DMA.100220の仕様決定を公表した。これは、Androidにおける「AIへの同等アクセス」がどのような形で求められるかを定義するものとなる。検索データ共有に関するDMA.100209の手続きも併せて進められており、いずれも7月27日の法定期限に関連している。

7月8日のEU一般裁判所の判断で示された手続き上の整理に従えば、Googleが不服申し立てを行っても、制裁金や遵守期限が自動的に停止されるわけではない。

注目点

Google Playの外部誘導制限を巡る論点は、EUのユーザーをより安価な外部購入手段へ案内できるかどうかに直結する。執行圧力が強まれば、EU域内でDTCやウェブチェックアウトへ誘導する法的基盤はさらに強固になる。

ただし、この期間中に制裁そのものが確定したわけではない。確認された動きは、7月16日の仕様決定となる。制裁額や正式な決定日は、引き続き確認が必要となる。

出典: Tech TimesEU Today

まとめ

今週の動きは、Androidにおける方向性を明確に示している。配信は開かれつつあり、Googleの決済手数料はサービス手数料から切り離され、引き下げも進んでいる。外部決済や代替決済を使った場合の採算性は、市場ごとにより具体的に試算しやすくなった。

一方、iOSはなお不確実性を抱えている。米国では外部リンク手数料の水準が未確定であり、欧州ではDMAに基づく執行圧力が継続している。

パブリッシャーには、新しいGoogle Playの手数料体系のもとで、どの程度の利益率を回復できるのかを精査することが求められる。特に日本では、9月30日の前倒し適用を見据えた準備が急務となる。

法的環境が固まり次第すぐに動けるよう、外部チェックアウトの基盤を整えておくことが重要になる。MoRの観点では、もはや焦点は「外部誘導が認められるか」だけではない。国・地域ごとに分断される規制環境の中で、コンプライアンスを満たしながら、アプリ外決済をいかに円滑に実行するかが問われている。